冬を楽しませる鳥たち

 秋に北の地方・地域から日本にやって来て冬を過ごし(越冬)て、春に去って行く(北に帰る)鳥たちを一般的に『冬鳥』と呼びますが、鹿児島県内には本州北部・北海道で夏に繁殖して、越冬にやってくる鳥も含めて冬鳥として楽しむことができます。
 鹿児島県内で冬鳥として代表的なものは、マナヅル・ナベヅル(出水平野)、クロツラヘラサギ (万之瀬川河口・須崎調整池・隼人・国分干拓地)、多くのカモ類やワシタカ類に住宅地でも観察できる鳥たちと、数多くの冬鳥が楽しめます。一年で一番多くの鳥を観るチャンスがこれからの冬の季節です。


須崎調整池 <姶良市>

 姶良市加治木町木田にあります文化会館『加音ホール』の南に広がる田園地帯の海岸側に、堤防に囲まれた須崎調整池はあります。加音ホールからは徒歩で3分ほどで行ける手軽な場所になりますが、ここは毎年カモ類の多くがやってくる有名な場所で、堤防から安全に観察できる事もありとても良い条件の場所、野鳥にとっても良い環境を備えた観察場所です。
 そして冬の楽しみと言えば、『観察の目玉というか!』数十羽のクロツラヘラサギの集団です。ここ数年には安定した個体数が確認され、しかも近い距離(かなり近い!!)で、給餌したり、二羽お互いがクチバシで羽繕いをし合ったり、飛翔する姿までも肉眼・双眼鏡でしっかりと観察でき、1日を通してクロツラヘラサギを楽しむことができます。
 この須崎調整池にはもちろんのことカモ類が多く冬場にやって来ています。毎年11月にイベント(探鳥会)を開催していましたので、その観察記録を紹介いたします。オカヨシガモ・ヒドリガモ・マガモ・カルガモ・ハシビロガモ・オナガガモ・コガモ・ホシハジロ・キンクロハジロ・スズガモ等が観察されています。個体によって観察数のばらつきはありますが数羽から十数羽、数百羽の記録もあります。
 また、調整池の周りは葦原が広がっており、オオジュリンやツリスガラなどの冬鳥も間近で観察することができ、サギ類・シギ類やミサゴに猛禽類(オオタカ・ハイタカ)もやってくる場所です。それと、いつも堤防側に姿を見せるのがカワセミで、比較的近い距離で飛び交ってくれて、間近で見れるチャンスがあります。


万之瀬川河口域 <南さつま市>

 左岸に県立吹上浜海浜公園、右岸に県立南薩少年自然の家を2分するように流れる万之瀬川は、サンセットブリッジの光景を楽しみながら、ゆっくりと自然の中での時間を過ごせる良い条件があります。レンタサイクルで公園内の施設や景色を楽しむ家族連れや釣り客など、多くの方々に親しまれている場所でもあり、一日ゆっくりと色んな楽しみ方を提案できる公園になってます。
 野鳥の観察も河口近くの干潟から海岸に広がる砂浜までの広大な生息環境が備わっており、カモ類からシギ・チドリ類までを時間を気にすることなく楽しめます。
 冬の季節は何と言ってもクロツラヘラサギで、鹿児島県内ではかなり昔から越冬が確認され一番古い観察地になりますし、毎年安定した羽数が確認されています。海岸の砂浜は全国有数のシロチドリの飛来地とされ、他にもミユビシギ・ハマシギが群れで飛翔する姿が楽しめます、春先はホウロクシギ・オオソリハシシギなど大型シギの観察もできます。
 また、薩摩半島西岸に位置する事もあり春秋の渡りの季節には、ソリハシセイタカシギやヘラシギ、カラフトアオアシシギの他にも、観察チャンスの少ない貴重な鳥たちの渡来が確認されている場所でもあります。
 河口域・海岸だけでなく、南薩少年自然の家や海浜公園の園内にも冬鳥は沢山います、松林や芝生の広がる場所が何カ所もありますので、ツグミ類やビンズイの姿はよく見かけますから、そちらへも足を伸ばされるのもよいかと。


出水平野・干拓地 <出水市>

 ツルの飛来地とし全国的にも有名な場所で近年は1万五千羽近くの羽数を記録していますが、ツル類だけでなく多種の冬鳥を見ることのでき、羽数もかなりの数になります。数年前にアネハヅルの飛来で野鳥関係者を楽しませてくれた事も、またソデグロヅルやタンチョウヅルなど過去にも話題を提供してくれてます。
 近くを流れる岩下川河口付近ではカモ類も沢山観察できるのはもちろんですが、ツルのいる東干拓ではツクシガモやタゲリ他にクロツラヘラサギやハジロカイツブリ・オオタカ・タシギ・タヒバリ類・カモメ類・ツグミ類・コクマルガラス等の記録があり、たくさんの種が楽しめる場所でもあります。
 ここ何年かは鳥インフルエンザ防疫のために入場が制限される場合もありましたので、情報を確認の上で出かけられてください。
 それとツル類が私たちをもう一つ楽しませてくれるのが『北帰行』です。とても魅力的なシーンで感動させてくれて、「来季も帰って来て!」と声をかけてしまいます。
 観察場所としては長島町の行人岳が有名ですが、出水平野から旋回しながら空高く舞登って行く姿も別の感動をもらえます。
 マナヅルは2月に入り朝鮮半島付近に高気圧がある晴れの日に気流に乗って旅立っていきます、是非このシーンを観にお出かけになられては!!