私のフィールドノート vol.85

 最初にカミングアウトしてしまうが、私は明らかにコレクター気質である。ならば、切手やコインやカードの収集をしているかというと全くしていない。要するに人工物の収集には興味がないのだ。こういう私にとって鳥の撮影というのはまさにピッタリの趣味。…ということで、60才定年退職後の2013年10月に野鳥の会かごしま県支部に入会、11月にキャノンのコンパクト・デジカメを購入、12月27日に初の野鳥撮影に姶良市の須崎を訪れた。この日撮影したのはわずか8種類。記念すべき1種類目はコサギだった。

<2014>

 明けて2014年しばらくは近場をうろうろして鳥見をしていたのだが、一向に撮影種類が増えない。3月末でわずか38種。2022年1~3月で私が撮影した種類が121種だったことを考えると、1年目の自分の鳥見力がいかにショボかったかが良くわかる。4月になってから主にシギ・チドリで種類が増え始め、5月5日に50種目ハマシギ。この年特筆すべきは5月15日に大浦干拓で自力発見で撮影したレンカク。10月10日に100種目ノビタキ。
 段々鳥見の感覚がわかってきたので、このあたりで数値目標を立てた。コレクター気質のくまきち君としては数値目標がないと燃えないのだ。国内ライファー(注:ライファーとは生涯を通じて初めて見た鳥のこと)400種、鹿児島県で300種、世界で1000種。これを生涯目標とする。種類には亜種も外来種も入れない。明確な証拠写真を撮れたものだけカウント。見ただけ、声を聞いただけはカウントしない、というルールとした。
 2014年は1~3月に撮り損なった冬鳥を10月以降撮影し132種で終了。

ヤンバルクイナ

<2015>

 2015年は2月に福岡でミコアイサ等冬鳥を荒稼ぎ。2月11日に150種目ウグイス。この年のハイライトは5月6日金峰町田布施で撮ったマダラチュウヒ。第一発見者4人のうちの一人となれた。なかなかの鳥運。6月上旬宮古島に遠征し、オオクイナ、キンバト等鹿児島にいないのを大量GET。177種となる。9月末沖縄本島に遠征、ヤンバルクイナとアカヒゲを撮るが、ノグチゲラには逃げられる。10月18日金峰山で200種目クロツグミ。この後、コンパクト・デジカメでは飛翔中の鳥が撮りにくいので一眼レフに替える。2年目のこの年は前年比80種増の212種で終了。

キンバト

<2015>

 2016年は4月上旬三宅島に行き、アカコッコとコマドリを撮影。帰りの船で念願のアホウドリ成鳥に遭遇。他にクロアシアホウドリ等海鳥4種も見ることができた。4月23日栗野岳山麓で250種目ノゴマ。7月には奄美大島に遠征。ルリカケス、アマミヤマシギ等をGET。11月下旬は初の北海道鳥見。しかも船(大洗~苫小牧航路)で海鳥を探しながら行く、という欲張りコース。トウゾクカモメ、クマゲラ、ウミガラス、ユキホオジロ等一挙に16種をライフリストに加えた。思うにこの2016年が私の鳥見ライフで最も充実した1年だったように思う。3年目のこの年は最終的に前年比81種増の293種。

アホウドリ

<2017>

 2017年は1月10日のカラフトワシからスタート。3月5日阿久根市のクロノビタキで300種達成。5年ぐらいかかるかと思っていたが、意外と早く3年3ケ月で到達した。3月末石垣島でカンムリワシ、カタグロトビ、ズグロミゾゴイ、6月上旬乗鞍と渡良瀬遊水地でライチョウ、トラフズク等を撮影。11月には宮城県蕪栗沼(最低標高なんと6m)でまさかのイヌワシ。くまきち君の鳥運恐るべし。しかしさすがに4年目となるとあまりライファーは増えず、前年比37種増の330種に終わる。

<2018>


 翌2018年は2月に沖縄本島でナンヨウショウビン、リュウキュウヨシゴイを撮影。6月に夏の北海道でギンザンマシコ、ヤマゲラ等。6月23日天売島のケイマフリで350種。…と、ここまでは快調だったが、350になった途端急に鉛の靴(そんなのあるのか?)を履かされたように足どりが重くなった。11月にはトキ1種の為にわざわざ佐渡に行く。く、苦しい。5年目の2018年、前年比25種増の355種。

アホウドリ

<2019>>

 2019年は1~6月の半年でカラアカハラ、ミゾゴイの2ライファーのみ。実はこの年から海外鳥見をするべく台湾へのツアーを申し込んでいたが、人数が集まらず中止。それならば、という事で7月の小笠原・硫黄島のツアーに申し込んだ。思惑通り憧れのアカオネッタイチョウ、シラオネッタイチョウに会え大満足。アジサシの豪華版というか、まるで天女のようなアカオ。白い物干しざおに羽根がはえたような異世界の怪物シラオ。今まで会った全ての鳥の中で最も印象的な出会いだった。11月末に三度目の北海道。さすがに目新しい鳥はあまり撮れず、ハギマシコ、シマフクロウ、チシマウガラスの3ライファーを加えるにとどまった。この年は前年比21種増の376種。

アカオネッタイチョウ
シマフクロウ

<2020>

 明けて2020年。3月に台湾に行く予約をしていたが、ここで世界的なコロナ渦勃発。結局この1年九州から出ることはなかった。この年増えたのはわずか8種類。オオモズ、キバラガラ、サバンナシトド、シマアオジ、ヒメコウテンシ、オオムシクイ、マミジロキビタキ、ツツドリ。さすがに苦しくなってきた。累計384種。

<2021>

 2021年この年もコロナに振り回され、2年連続九州を出れず。しかしさすがに渡り鳥の通過地鹿児島。居ながらにして珍鳥に会える。特に5月は大当たり。カラフトムジセッカ(県本土初記録)、ブロンズトキ、コルリ、イスカ、チゴモズ。なかなかのラインアップだった。5月5日のブロンズトキで鹿児島県でのライファー300種達成。初年度立てた目標の一つを達成できた。ところが、7月13日夜突然の激しい腹痛。なんと大動脈解離。有名人がよく突然死するあの病気になってしまった。さいわい血管の切れた場所および切れ方が良かったらしく手術は不要、しかし血圧を下げろ、重い物を持つな、転倒するな、脂っぽい食べ物は極力避けろ、と禁欲的な生活を強いられる事に。医師に「ハーゲンダッツはどうですか?」と恐る恐る聞いたところ、あまりよろしくはない、とのつれない返事。うぐぐ、つらいよー。この年は佐賀県に3回行き、オオノスリ、クロハゲワシ、ケアシノスリと大物トリオをGETしたのも大きかった。結局13種増の397種。いよいよ目標の400が見えてきた。


オオノスリ

<2022>

 2022年さすがにまだ撮っていない鳥は難物ばかり。3月に大分県まで行ってハイイロオウチュウ。4月に今まで何故かすれ違いが続いていたコシャクシギを出水でget。399種目!遂に400にリーチをかけた。ここであっさりヤイロチョウあたりを撮れれば言うことなしだが、世の中そんなに甘くはない。ここは久しぶりの遠征で勝負をかけるしかない、という事で7月の宮古島ツアーに申し込んだ。申し込んだ当時はコロナ感染者数は大した事なかったのだが、出発の日が近付くにつれてどんどん増加。しかも最も感染率の高い沖縄県。ハラハラの毎日だった。7月10日に出発。翌11日にチャーターした漁船で宮古島南方のパナリ岩礁に向かう。ここで繁殖しているマミジロアジサシを撮影。遂に念願のライファー400種を達成した。野鳥撮影を始めて8年7ケ月。短いような長かったような…。翌11日に7年前に4回見て1回も撮れなかったミフウズラにリベンジ!401種目。


マミジロアジサシ

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 人それぞれ色んな鳥見スタイルがあるが、私の場合は以下の通り。1.三脚は一切使わない。その代わり手ぶれ補正が強力に効いているカメラ、レンズを使う。理由「三脚を立てた時には鳥は無し」2.連射をしない。一回飛翔中のハイイロチュウヒを連射撮影した事があるが、その後の画像処理があまりに面倒で、以後連射は禁じ手にした。3.一か所に長居しない:理由「飽きっぽいから」退屈に対する耐性が極端に低いだけのこと。鳥の為を思ってとかいう偉そうな理由ではない。
 さて、当初の目標国内ライファー400種と鹿児島県での300種は達成できた。しかし、海外旅行に行くのが極めて困難なこのご時世、世界で1000種はあきらめざるをえない。目標の無くなったくまきち君は今後どこへ向かうのだろう。私が鳥見に行った最東端:北海道納沙布岬…ここから先は北方領土。こここそが日本最東端かと思ったら、実は東京都南鳥島が最東端だそうです。最北端:北海道サロベツ原野…日本最北端宗谷岬の南約50km。最南端:東京都南硫黄島…小笠原のさらに南方。上陸はできず船からの鳥見。最西端:沖縄県石垣島…ここより西に西表島、与那国島があるので、これはいずれ更新できるかも。2022年7月末現在 国内撮影種401種、亜種64、外来種6、鹿児島県内撮影種312。姿を見たが撮影できなかった鳥:ウズラ。声を聞いたが撮影できなかった鳥:オオジュウイチ、セグロカッコウ、ヤイロチョウ、エゾセンニュウ、シマゴマ。もう伸びしろはあまり無いが、行けるところまで行こうかと思います。
 最後に、この8年半の鳥見ライフで色んな方にお世話になりました。珍鳥情報を頂いた方、カメラの使い方を教えてくださった方、鳥のポイントを教えてくださった方、鳥の識別に迷った時的確なアドバイスをしていただいた方等々ただひたすら感謝しかありません。一人でできる事はたかが知れているが、良い人間関係に恵まれた事により素晴らしい鳥見を続ける事ができました。本当にありがとうございました。