2023年コアジサシ繁殖保護活動

ここ7年の記録を振り返って、この活動を続けられている要因は
1:地元の方々のご協力を継続していただけていること
2:志布志湾には、アジサシ類が繁殖するのための餌となる小魚が豊富であること。
3:ハヤブサをはじめとする鳥類、タヌキなど獣類も含め取り巻く生物も多様性に富んでいること。

コアジサシ飛来と活動開始

 2023年4月29日 13:00 横瀬海岸にて、コアジサシ8羽初認。にぎやかな鳴き声が去年の繁殖場所の上空を旋回していました。すぐに鏡原さんと吉田さんに連絡して、今年の繁殖保護活動の開始です。
 繁殖場所は、田原川右岸の私有地です。すぐに所有者の川越産業様にロープとネット設置の許可をもらいに走りました。川越会長も「そろそろかな」と気にかけてくださっていたようで、快諾のご回答をいただきました。
 5月12日 営巣が始まったのを確認し、大崎町役場環境政策課に立入制限ロープ設置を届出。
 翌13日9時から小雨の降る中集まってくれたいつものメンバー5名(※1)で、2時間ほどで約400mのロープを張り終えました。

営巣地の状況と防獣ネット張り

 5月16日午前 コアジサシ100+、抱卵20+を確認しました。去年より2週間ほど速いペースで、繁殖活動が進行しているようです。
 今年の営巣地は田原川河口右岸の砂浜。白い軽石の漂着しているところに南北に長く200mに渡って延びていました。去年、一昨年の中洲や半島のように川水に囲まれてはいない場所で、周囲の松林からタヌキなどが容易に襲うことが可能な平坦地です。早急に防獣ネットの設置が必要な状況と思われました。
 すぐに大崎町役場係長にも現地に出向いてもらい、保護網設置を了承いただき、手配にかかったのです。
 作業日時を5月20日9時からと決めて、人手もかかりそうだったのでSNSと電話で作業参加を呼びかけたところ、

12名のボランティアが集まって下さいました(※2)。そして今年は、コアジサシの繁殖が志布志湾岸で確認されていることをアピールすることを目的として、南日本新聞にもプレスリリースしたことを付け加えておきます。
 昨年使ったネットを再利用して、午前中いっぱいで、営巣地周囲約600mを囲むことができました。梅雨の晴れ間、猛暑の中の作業でしたが、遠方からのご参加本当にありがとうございました。

抱卵調査と飛来の増加

5月26日 第1回目の抱卵数調査を行い、コアジサシのみで、営巣数102、卵数221をカウントしました。まだ2個だけの巣が多かったのでこれから3個目を生む親鳥が多いと予想されます。
6月3日
 台風2号の雨と大潮が重なって田原川が溢れ、およそ30巣が流されたと思われます。防獣ネットも200m近くが倒れ復旧補修作業に当たりました。
6月5日
 2羽の孵化を確認しています。(最初の抱卵から約3週間め)
6月9日
 コアジサシ250+、ベニアジサシ30+、アジサシ、ハジロクロハラアジサシ、クロハラアジサシなどおよそ300羽にまで増加しました。

   これまで、ほぼ順調に推移したので、次の抱卵調査を楽しみにしていました。

営巣地放棄・飛去

 ところが3日後、6月12日、抱卵していた親鳥たちのほとんどが営巣地を放棄し、ベニアジサシもほかのアジサシ類もすべて飛び去ってしまい、上空を旋回しているコアジサシ数羽が確認できるだけでした。
 防獣ネットの周囲を点検すると獣の襲来があったことは明白でした。
 去年も襲われて巣数が激減しましたが、親鳥ががんばって再度産卵して抱卵を続け、巣立ちまで見せてくれました。しかし、今回は壊滅的な被害で、親鳥たちの姿は、菱田川の河口など近くの浜でも見つけることはできなかったのです。

防獣ネットの下を掘って営巣地に侵入していた
(タヌキと思われる)

コアジサシ再飛来と防獣ネット張り

 5月末に抱卵を開始して、6月9日には300羽まで増えていたコアジサシを主としたアジサシ類が、3日後の6月12日、獣の襲来によって営巣を放棄し、ほぼ全てが飛去してしまいました。

 今年の保護活動を諦め、県自然保護課の「みんなの生物多様性支援事業」補助金の取り下げを申し出た後の6月17日、鏡原さんからコアジサシが50羽ほど飛来しているとの連絡が入りました。営巣地は飛去したネットから200mほど西の砂浜で、いなくなってしまった鳥たちが帰ってきたかどうかはわかりませんが、以前のネット内で営巣はありませんでした。
 18日に進入制限ロープを張り、19日に役場に届出て、防獣ネットをあらたに張りまた。もちろん自然保護課の補助金申請は復活していただいたうえで。
 こんどは獣がネットの下をくぐって侵入できないようネット裾をより深く埋めるため、鍬で深さ15cmほど溝を掘って設置したのです。これは重労働で、5人がかりで、9時から15時までかかりました。

新たな営巣地の中で

 再設置したネットの中とその外、なぎさ側に小さいながら新たな営巣地がつくられました。飛来したあと飛び去った個体もあって、わずか10羽余りのコロニーで5つのペアが子育てを開始したのです。抱卵とハヤブサやトビへのモビングをくりかえす親鳥たちの姿には、けなげさよりもその強さに感動を覚えずにはいられませんでした。

小学校への出前授業

 そのような状況ではありましたが、近くの小学校への出前授業を実施しました。
 県立博物館から剥製をお借りして、子供たちにコアジサシと天敵のようすをよりリアルに知ってもらうとともに、この地域の生物多様性を伝えることを目的にかかげて。。

6月26日 志布志市立通山小学校

 3年生12名(男子5名女子7名)。志布志市の丸山一さんに母校で保護活動の概要をお話いただきました。

7月12日 大崎町立大丸小学校

 3年生、6年生15名。 学校内で剥製を使った座学の後、大隅広域公園からお借りしたスコープで、1組だけ残った抱卵のようすを観察してもらいました。

来シーズンの取り組みを話し合う

 作業終了後、志布志市で一番美味しいと評判の喫茶店「とけい台」に移動して、好みのピザを食べながら今年の反省を踏まえて来年への取り組みを話し合いました。
1:防獣ネットの裾を深く埋め、侵入防止を高めた抱卵エリアを4月中にあらかじめ造成する。
2:エリア予定地の所有者に使用許可を早急に得る。
3:愛知支部のご協力を得て、デコイと誘因音源を設置してみる。
4:デコイは小学校にペイントを依頼する。
5:エリア申請をあらためて大崎町を経由して県自然保護課に提出しておく。
 今シーズンは残念ながら巣立ちを見ることはできませんでしたが、来年はきっとみんなで見たいものです。ご協力をよろしくお願いいたします。
  以上。