鳥インフルエンザ出水市の場合

ツルの越冬地と風向きーー>発生養鶏場の場所

 出水での昨シーズンはツルの死亡・衰弱個体(1300羽超)の増加し、それと重なる様に養鶏場での高病原性鳥インフルエンザが広がり、鹿児島県内でも約137万羽の処分が行われました。
 発生のほとんどが出水市にあるマルイ農協系列の農場で、国内でもモデル農場・地区とされるほどの徹底した警戒体制・防疫対策をとって運営されている農場です。
 今回の発生農場の8カ所はウインドウレス鶏舎(窓が無い)であった。大型換気扇や断熱材を設置し、光・温度・空気量(風量や風速)がコンピュター管理されている。完全に外部と遮断され小動物や野鳥の侵入を防ぐことができる構造になっている。そのため感染被害は少ないと考えられてました。
 今回の発生農場ではネズミや野鳥などの侵入痕跡はなく、鹿児島大学共同獣医学部では粉じんや羽毛を介した侵入の可能性を指摘しています。小動物の侵入であれば侵入場所近くからの感染が広がると考えられるが、今回のウインドウレス鶏舎は建物の中央付近で衰弱したニワトリが発生しているので、換気の状態からしても空気中を漂って入ってきた可能性が高いと結論づける内容になっています。最終的な侵入原因は確定されていませんが可能性としてまとめられています。
 発生時期の風向きを考えると、ツルや冬鳥は風の流れに乗ってやってきます、今回は東干拓から季節の風の方向に感染農場が広がっていますので、風向きが影響に関係してることも推測できるようです。
 暑い夏が過ぎ秋の涼しさを感じる頃には、また冬鳥がやってきます。ツルの飛来数も心配ですが高病原性鳥インフルエンザの感染は、我々の食生活にも関係しますし感染後に生まれ育ってきたニワトリが役目(産卵)を果たす時期と重なります。この秋から初冬の状況が気になります。

2022年(日付は鹿児島県発表日)
 11/2 :衰弱したナベヅル1羽A型陽性反応確認
 11/4 :ナベヅル6羽の陽性反応を確認
 11/9 :ナベヅル8羽から陽性反応、計15羽になる
 11/10 :新に7羽が確認され合計22羽
 11/15 :回収されたツルが138羽、新に19羽陽性確認
 11/18 :高尾野町の養鶏場で初確認、12万羽を殺処分
 11/24 :高尾野町の農場で2例目の感染確認
 11/26 :野田町にある養鶏場で3例目、対象47万羽
 12/1 :ツルが数百羽単位で北上してるとの目撃情報
 12/1 :高尾野町の養鶏場で4例目を確認
 12/1 :出水平野で回収されたツルが1000羽を超える
 12/3 :高尾野町で5例目が確認され、累計76万羽超
 12/6 :高尾野町の養鶏場で6例目発生
 12/7 :高尾野町の採卵養鶏場で7例目を確認
 12/8 :野田町の養鶏場で8例目、殺処分110万羽超
 12/10 :高尾野町で9例目が確認される
 12/10 :出水市江内川で白濁や沈殿、消毒臭もあり
 12/17 :埋去地近くのため池で悪臭の訴え
 12/17 :南九州市の農場で10例目が発生する
 12/18 :阿久根市の養鶏場で11例目が確認される
 12/20 :阿久根市脇本の農場で12例目発生
2023年
 1/16 :出水地区が約2ヶ月ぶりに高病原性の終息
 2/3 :鹿屋市串良町で13例目が発生する

ウインドウレス鶏舎とは

 表記のとおり窓のない鶏舎で、外部とは閉鎖された建物で1棟当たり10万羽を飼育できる大きさのものです。記事内で紹介したように大型の換気扇や断熱材を使い、光・温度・湿度をコンピューターが管理する施設です。また自動で餌やり・清掃作業に採卵もできるようになっています。
 メリットは:坪あたりの飼育数が多いこと、飼育設備費用が少なく自動化でき、外部からの動物・野鳥の侵入を防げること。
デメリットは:一度細菌やウイルスが侵入すると感染拡大しやすく、建設費や維持管理費用が大きくなること。
 また、EUでは日光や外気を開放的に浴びて自然に近い環境での飼育に取り組む農家が多く「Animal Welfare:家畜福祉(家畜に与えるストレスや苦痛を抑える配慮)」の考えが広がって、平飼いをしている農家も多くあるそうです。

ウインドウレス鶏舎
マルイ農協HPより
参考資料:南日本新聞・南日本新聞HP・環境省HP・鹿児島県HP・マルイ農協HP・NHK鹿児島放送局HP