永田川中流域の野鳥調査報告
(2010年〜2022年)

 永田川は鹿児島市南部谷山地区を流れる二級河川です。鹿児島市春山町を源流として県道沿いに下り、皇徳寺団地・星ヶ峯団地との谷間を通り山田IC下へくだり、谷山北公民館近くで山之田川と合流、大橋近くで滝之下川と合流し谷山地区の中心へ向かい、JR谷山駅や鹿児島情報高校の横を流れ、河口近くで和田川と合流し鹿児島湾へ流れこむ。


 永田川中流域では2003年から現在まで会員有志により毎月1回(年12回)の野鳥観察・調査が行われてきた。
 これまで季刊誌の「るりかけす」111号や150号で報告されているが、今回2010年以降の観察結果をまとめたので報告する。
 2010年頃は10名前後の調査参加者がいたが、近年は参加者数が半減している。
 永田川中流域には上流から樋渡橋、宮下橋、新宮下橋、大橋、下川原橋、七村橋の六つの橋がかかっている。
 4月から10月までは午前7時、11月から3月までは午前8時に下川原橋近くに集まり、上流、下流の2班に分かれて上流班は樋渡橋まで反時計回りに左岸から右岸へ周回し、下流班は七村橋まで時計回りに左岸から右岸へ周回する。距離はそれぞれ約2キロ、所要時間は約1時間半ほどである。
 永田川中流域周辺は年々開発が進み田畑は宅地化され、それに伴い車や人の通行量が増えて野鳥にとっては厳しい環境になっている。
 また、度重なる治水工事で堆積土砂やそこに生えるセンダン、イヌビワ、セイタカヨシ、チガヤなどの植物の除去により野鳥が休息したり営巣する環境が失われてしまった。

 それにもかかわらず、この永田川中流域には真方堰を始め取水堰や落差工が複数あり、そこには魚道が設けられているのでオイカワやカワムツなどの小魚がたくさん生息している。全国鳥類繫殖分布調査報告(2016年〜2020年)によると小魚の減少による小型の魚食性の種の減少が報告されているが、永田川では小魚の減少より休息場所、営巣場所の消失による影響が大きいと思われる。
 そのため永田川を単に採餌場所として利用する種より、採餌及び塒の場所として利用していたゴイサギ、タシギ、クイナ類等の種の減少が著しい。
 多くの種が出現頻度、羽数を減らす中でイカルチドリ、セイタカシギ、オカヨシガモ、イワツバメなどが増えていることに注目しながら引き続き観察を続けていきたい。 

13年間の調査結果
(2010年〜2022年)

調査回数(141回)
観察された種数(94種)

月別平均の種数と羽数
 種数羽数
1月34356
2月34311
3月32270
4月27185
5月22151
6月17131
7月7118
8月18116
9月22194
10月27289
11月32303
12月35353

カモ類の調査結果

  観察されたカモ類は水面採餌カモ11種、潜水採餌カモ3種、合計14種である。
  カルガモ、コガモ及びヒドリガモの3種が全体の95%を占める。
  カルガモは留鳥ではあるが季節により羽数の変動が大きく、ピークは10月である。

出現回数
 カルガモ136
 コガモ89
 オシドリ44
 ヒドリガモ43
 オカヨシガモ17
 マガモ12
 ハシビロガモ11
 ヨシガモ9
 オナガガモ5
 ツクシガモ3
 ホシハジロ2
 アメリカヒドリ1
 キンクロハジロ1
 スズガモ1
総カウント数
 カルガモ2,740
 コガモ1,693
 ヒドリガモ382
 オカヨシガモ88
 オシドリ60
 マガモ34
 ハシビロガモ20
 ヨシガモ16
 ホシハジロ9
 オナガガモ6
 ツクシガモ3
 アメリカヒドリ1
 キンクロハジロ1
 スズガモ1

シギ・チドリ類の調査結果

出現回数
 イソシギ112
 クサシギ72
 コチドリ24
 セイタカシギ20
 タシギ20
 イカルチドリ15
 キアシシギ7
 タカブシギ2
 オジロトウネン1
 タマシギ1
 ハマシギ1
総カウント数
 イソシギ724
 クサシギ150
 コチドリ41
 タシギ29
 セイタカシギ24
 イカルチドリ23
 キアシシギ15
 タカブシギ2
 オジロトウネン1
 タマシギ1
 ハマシギ1